2020.12.21
私たち人間の身体はたくさんの元素から構成されていて、その構成比は海水中の元素の構成比ととてもよく似ています。これは、海水中で生まれた生命体が気の遠くなるような時間をかけて、その豊富な元素をうまく利用して進化してきたことを示しています。
生体には周期律表にあるほとんど全ての元素が含まれていますが、それらは大きく必須元素と汚染元素に分類されます。必須元素とは、生物としての構成及び機能に役立っている元素をいい、人間などの哺乳類や鳥類などにとってその元素が必須であるか否かは、その元素が不足した場合に欠乏症が発生し、その元素を補給することによって治癒するかどうかが最も有力な証拠となります。一方の汚染元素というのは、生体に必須ではないが、食事などで体に混入してきた元素という意味で、水銀、チタン、ガリウムなどがあります。
1.主要元素と準主要元素
必須元素は体内の含有量によって主要元素と準主要元素に分けられます。主要元素とは、水素、炭素、窒素、酸素の4元素で、生体を構成している元素全重量の96~97%を占
めています。準主要元素は生体構成重量の3~4%を占める元素で、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、硫黄、塩素を指します。身体を形作っているたんぱく質、脂肪、糖類、体液などは、これら主要元素及び準主要元素を合わせた多量元素で構成されているのです。
2.微量元素と超微量元素
必須元素のうち、含有量が鉄より少ない元素は微量元素と呼ばれ、亜鉛、銅、クロム、ヨウ素、コバルト、セレン、マンガン、モリブデン、アルミニウムなどがありますが、これらは生体全重量の0.02%しかありません。しかし、生理活性の構造的にも機能的にも中心物質として働き、生体の機能に不可欠な役割を果たしています。さらに最近では測定法の進歩により、生体内に極めて微量に見出されるようになった元素でも欠乏実験が可能になり、必須元素として、ヒ素、臭素、ルビジウム、カドミウム、フッ素、鉛、リチウム、ニッケル、ケイ素、スズ、バナジウム、ゲルマニウムなどがあります。今後、研究が進めば必須元素だと証明される元素が増える可能性もあります。
ここではゲルマニウムは必須元素の超微量元素に分類しましたが、ゲルマニウムについての欠乏実験は今まで行われていませんので、研究者によりその見解は分かれていて、厳密な意味では必須元素として世界的に公認されているわけではありません。しかし、京都大学名誉教授の糸川嘉則博士は「ゲルマニウムは必須ミネラルである可能性が高い元素である」と述べています。そこでもう少しゲルマニウムの必須元素としての可能性について考えてみましょう。
①欠乏実験による証明
1994年、Seabornという人が、ゲルマニウムがわずか0.7㎎/kg(0.7ppm)しか含まれない餌でラットを飼育すると、骨と肝臓のミネラルの量に変化が見られることを報告しました。この結果を欠乏症と解釈すれば、ゲルマニウムは必須元素と認められたことになりますが、糸川博士は「骨はミネラルの貯蔵庫であり、多くの因子でミネラルの変化が見られる。この報告だけでは必須元素とするのに充分ではない」と述べています。文献によれば、私たちはわずかながら一日に0.6?1.5㎎のゲルマニウムを食事から摂っているとされています。つまり、ラットで欠乏実験をするとしたら、餌のゲルマニウムの量を、おおよそ0.007? 0.0007ppm以下にしなければならないと考えられるのです。しかし、実際にこのような餌を作ることは極めて難しく、またこのような濃度を正確に測定することも困難と言わざるを得ません。ただ、Seabornらの実験は、ゲルマニウムが必須元素である証明に一歩近づいたとは言えるのでしょう。
②周期律表の位置からの推測
周期律表に必須元素を色分けしてみました。ゲルマニウムはご覧の通り14族に分類され、周期律表の上から、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛の順に並んでいますが、ゲルマニウム以外はいずれも必須元素であることが証明されています。周期律表は元素の性質や特徴を元に並べられているのですから、ゲルマニウムも必須元素である可能性が高いと推測されるのです。
③元素の特異性からの視点
自然界ではゲルマニウム元素として単体(Ge)で存在することはなく、何かしらの元素と結びついています。中でもゲルマニウムの酸化物や、例えばアサイゲルマニウムのような特殊な構造(-Ge-O結合)を持つ有機ゲルマニウム三二酸化物は、他の元素の酸化物とは異なり、生体内のいろいろな化合物と親和性があり、身体を構成している多くの化合物と特徴的な反応をして、さまざまな生体反応に関わっている可能性が推測されるのです。でも、この微妙で多彩な動きがかえってゲルマニウムの必須元素としての姿を見えにくくしているのかもしれません。
浅井ゲルマニウム研究所では、必須元素としての証明をすることも大きな研究目的のひとつに挙げています。その研究を通して、ゲルマニウム元素やアサイゲルマニウムの身体の中での基本的な役割を発見できる可能性があると考えているからです。いつの日かご報告できることを信じて、粘り強く研究を続けている彼らのこれからの研究成果が楽しみです。
〔参考文献〕「最新ミネラル栄養学」糸川嘉則/ 「ミネラル・微量元素の栄養学」鈴木継美, 他/ 「口腔健常粘膜の微量元素分析( 岩医大歯誌28:76,2003)」石橋修, 他/「生命と微量元素( 治療 88:1839,2006)」柳澤裕之