2020.12.22
湿度、気温が上がる梅雨時から9月にかけては食中毒が発生しやすい季節です。食中毒とは、原因となる細菌やウイルスが付いた食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べたり飲んだりすることによって起こる健康被害をいいます。症状の多くは腹痛、下痢、嘔吐など急性の胃腸障害です。その原因として、O-157や黄色ブドウ球菌などの細菌によるもの、ノロ、ロタなどのウイルスによるもの、洗剤や農薬、水銀などの化学物質によるもの、魚介類、肉、きのこなどの自然毒や寄生虫によるものの4つに大別されます。
予防のための3原則は、原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」。まず、手や調理器具をよく洗い、食品に菌をつけないように。例えば、魚介類を調理した包丁やまな板をそのまま別の調理に使用すると、他の食品に二次汚染することもあるので要注意です。更に、菌が増えないように冷蔵が必要な食品はすぐ冷蔵庫や冷凍庫で保存すること。ただし、冷蔵庫を過信せず、食材は早めに使い切るよう心掛けましょう。そして、食品をしっかり加熱して殺菌します。また、調理器具も熱湯や漂白剤で定期的に消毒を。同じものを食べても、それぞれの免疫力や胃腸の働きの強弱などによって重症度に差が出ることがあります。普段から体調を整え、胃腸を丈夫にしておくことも食中毒予防につながりますね。
握り鮨に付き物のガリや、お刺身に添えるしょうがは、その香りと味を楽しむだけでなく、生魚の食中毒予防にもなっているのをご存じの方も多いでしょう。しょうが独特の香味・辛味成分は抗菌作用のほかにも新陳代謝を活発にして血行を促進し、体を温める働きがあります。数年来、冷えが健康の大敵であることが認識され、冷え対策の身近な食材として、定番のしょうが湯以外にもさまざまな飲み物や食品、お菓子、手作りジンジャーエールなど、しょうがフードが流行しているようです。
ところで、焼き魚に付け合わせる葉しょうがの甘酢漬けを「はじかみ」といいますが、「はじかみ」はもとはしょうがや山椒などを表わす古語で古事記にも登場し、その由来は“ 歯で噛んで辛いもの”とも“ 端が赤い、はし赤み”から来たともいわれます。中国で古くから生薬として利用されてきたしょうがは、日本にもたらされてからも食用や薬用に用いられ、江戸時代には邪気を祓う薬味として神社に奉納する行事なども行われたといいます。その名残りで今でも「しょうが祭り」が行われる神社が全国に数ヶ所あり、しょうが湯が振舞われたり、無病息災を願う縁起物としてしょうがが販売されたりするそうです。昔も今も、しょうがはまさに健康を支える〝 薬味〟です。