スキンケアの可能性浅井フーズ通信

スキンケア研究室

2020.12.22

バリア以外の皮膚の役割

  • ひなこ

    石けんで洗って汚れを落とし、化粧水やクリームでお肌を整える、ただそれだけなのにシャキッとしたり、ホッとしたり。スキンケアってその時に応じた気分転換になりますよね。

  • ノン子

    洗うにしても化粧水をつけるにしても、お肌にやさしく触れることを〝心地良い〟と感じることから良い効果を生むのよ。お肌の状態を意識しながら、自分をいたわる気持ちで行うともっと良いのよ。

  • ひなこ

    イライラしたり落ち込んだりした時にペットやお気に入りのぬいぐるみに頬ずりすると、気分が和んで元気が出ますけど、同じようなことでしょうか?

  • ノン子

    そうよ。何かに触れて心地良さを感じると、身体を興奮状態に陥らせる交感神経が鎮まって、副交感神経が優位に働くようになるの。呼吸や心拍数が落ちつきリラックス状態になって、ホルモンなどのバランスも良くなったりするのよ。

  • ひなこ

    お肌の役割って、外敵からのバリアだけではないんですね。

  • ノン子

    皮膚にはいろいろな感覚神経がアンテナを伸ばしているけど、中でも触感覚は胎児期に最初に発達する感覚なんですって。人も動物も、まだ目や耳が十分発達していない新生児期に、母親や母親代わりの養育者に心地良く触れてもらうことが、その後の心や身体の発育に大きな影響を及ぼすのね。

  • ひなこ

    スキンケアは良い触感覚として役立つわけですね。

認知症とスキンケア

  • ノン子

    スキンケアによる心地良さは、高齢者の介護現場でも注目されているのよ。例えば認知症の方にも良い作用を示すんですって。

  • ひなこ

    そういえば〝化粧療法〟ということを聞いたことが有ります。ご高齢やご病気で気力の低下している方にほほ紅や口紅でメイクしてあげると、無表情だったお顔に笑顔が出てきたり、食欲が出てきたり、行動が積極的になって外出できるようになったりするそうですね。

  • ノン子

    ええ。化粧療法は随分前から知られていて、今では介護福祉士養成のテキストでも取り上げられているそうよ。実際マッサージやメイク、ネイルケアなどを取り入れている施設も増えているのよ。ただそのためには美容専門員の指導が必要だったり、後でクレンジングがうまく行かなくて困ったとか、かえって介護現場のストレスになることもあるみたい。そこで〝洗って保湿する〟という誰もができるスキンケアでも何か効果があるのではないか、ということを研究した例があるのよ。

  • ひなこ

    それは気になりますね!

  • ノン子

    介護施設に入所している高齢の女性で、認知症状の一つの〝夕暮れ症候群〟を示す方 59 名(平均年齢 86 ± 5 歳)に、洗顔と保湿のスキンケアを 1 日 2 回、ご自分で行うことを原則に、 1 か月間続けていただいたそうなの。

  • ひなこ

    夕暮れ症候群というのは?

  • ノン子

    入院中や介護施設に入所している認知症の方に見られる症状で、夕方から夜間にかけてご自宅に帰りたがって落ち着きがなくなり、歩き回ったり、不安を訴えられたり、それを無理に止めようとするともっと混乱したりする、という症状よ。

  • ひなこ

    介護する方にとっても大変ですね。

  • ノン子

    それが、スキンケアを始めて 1 か月後には、夕暮れ症候群の症状の出方が少なくなっていたの。加えて食事を楽しめるようになったり、着替えなどの日常動作が積極的にできるようになったそうよ。

  • ひなこ

    それは凄いことですね !   特別なプログラムなのですか?

  • ノン子

    なるべく普段の生活のリズムを乱さないよう、無理なくできる方法にしたのよ。

  • ひなこ

    ひなこちゃんでもそれだけのことで症状に変化が見られたなんて、何だか信じられないです。

スキンケアの波及効果

  • ノン子

    私も驚いたけど、研究した方は次のように考察されているわ。

    1.  スキンケアそのもので感じる「心地良さ」で安心感が得られる。
    2.  安心感が得られることで夕暮れ症候群が緩和される。
    3.  夕暮れ症候群の緩和により食事や着替えなどの日常生活も落ち着いてできるようになる。

    ということなの。おまけに

    4.  手順を理解し実行するということが脳の活性化に通じる。 5.  鏡を見ながら行うことで、自分を認識し、身だしなみへの関心が高まるなど周囲への配慮まで意識が広がってゆく。
    6.  手順の説明を聴いたり、動作時に手を借りたりすることで周囲の人と自然にコミュニケーションがとれるようになる。

    ということで生活全般も良い方向に向かい、しかも、

    7.  化粧水をコットンにとって顔に塗布するためには、指や腕や背中の筋肉を使うので運動機能の維持・トレーニングにもなる可能性があるのではないか。

    ということなの。

  • ひなこ

    高齢の方には筋トレ効果まであるんだ!

  • ノン子

    別の研究でも、スキンケアを習慣にしている方は脳機能の低下が遅くなる、という結果が得られているのよ。

  • ひなこ

    スキンケアにこんなにいろいろな力があるなんて、うれしくなっちゃいます。まだまだ新しい発見がありそうですね。

参考文献

  1. 須賀京子:高齢者施設に入所している認知症女性高齢者の夕暮れ症候群の緩和と生活機能の改善を目指すフェイスケアプログラムの開発  2015年9月 聖隷クリストファー大学大学院看護学研究科博士後期課程  資生堂ビューティーサイエンス研究所編:化粧心理学-化粧と心のサイエンス-フレグランスジャーナル社(1993)
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