手荒れを防ぐ!浅井フーズ通信

スキンケア研究室

2020.12.05

顔の事情、手の事情

  • ひなこ

    主任、聞いて下さい! お昼休みに銀行でお金を下ろそうとしたら、ATMのタッチパネルが反応しなかったんです。係りの人に訊いたら、『指先に息を吹きかけて湿らせて下さい』って言われたんです。

  • ノン子

    それはびっくりね! そういえば、多くのタッチパネルは指先に湿り気がないと反応しないらしいわよ。

  • ひなこ

    そんなに手が乾いていたのかしら? 社会生活にまで影響するとは!

  • ノン子

    手も顔と同じようにいつも表に出ているから乾燥しやすいのよね。体の末端で血行が悪くなりやすいし。

  • ひなこ

    それにしても、手は“ガサガサ”では済まなくてヒビが切れたりアカギレになってしまったり、荒れの症状が随分ひどくなりますね。一度アカギレまで行ってしまうと、春になってもなかなか治りにくいし。

  • ノン子

    それは、皮膚の構造が顔と手ではチョッと違うからなのよ。例えば、角質層の厚さで比べると、手のひらは顔に比べて4~5倍厚く、50層くらいあるのよ。

  • ひなこ

    重いものを持ったり、熱いものや冷たいものに触れたりするから、丈夫に出来ているんですね。

  • ノン子

    ところが、厚さだけ見ると丈夫そうだけど、汗腺はあっても皮脂腺がないから乾燥しやすい、という弱みがあるの。皮膚の保湿システムのうち、角質細胞の天然保湿成分や細胞間脂質はあっても、その外側を覆って保護するはずの皮脂膜には頼れないのよ。

  • ひなこ

    そうか、皮脂腺は毛穴を通じて皮脂を分泌するというのに、手のひらには毛穴自体が全然ないですものね。

  • ノン子

    そして手の甲はといえば、角質層は顔よりは厚いけれど皮脂腺は少ないの。

  • ひなこ

    ということは、やっぱり乾燥には弱いということですね。

  • ノン子

    それに加えて手は何かと水に触れることが多いから、そのたびに細胞間脂質や角質細胞から保湿成分が抜け出して、潤いを保てなくなるの。そういう状態が長く続くと、表皮は緊急体制をとって角質細胞を増産しようとする。でも、急ぐから未熟な角質細胞ばかりできてしまい保湿力の回復にはならない。それに細胞間脂質もスカスカ状態だから、角質層はまるで“厚いだけでもろい壁”状態になってしまうの。だから、ちょっとした衝撃で壊れてしまうのよ。皮膚の溝や指のシワに沿って割れてしまったのが『ヒビ』、それが更に悪化して真皮層までひび割れてしまったのが『アカギレ』なのよ。硬い部分が厚いから亀裂が深くなってしまうのね。そんな状態だからバリア機能も保てなくて外部の刺激物質が入りやすくなり、よく言う「主婦湿疹」になることもあるの。

  • ひなこ

    水をさわることが乾燥を呼ぶなんて、皮肉なものですね。

  • ノン子

    洗顔や入浴以外は水に触れないようにできれば良いけれど、普通はそんなことは無理よね。生活の中で一工夫して少しでも手荒れを防ぐようにしましょう。

手荒れ予防の6か条!

  • ノン子

    (1)「冷たくない」程度の湯温で洗う
    温かいほど皮脂が奪われやすいし、冷たい水では手の血行が悪くなるから、「つらくない程度の冷たさ」のお水で手を洗ったり洗い物をしたりすると良いですよ。

  • ひなこ

    私はゴムでカブレ易いので、実験器具など洗う時は中に綿の手袋を重ねています。

  • ノン子

    (2)水を長時間使うときにはゴム手袋をする
    それは良いことね。ただし何回も続けて使うと、汗でゴムから溶け出した原因物質が綿手袋に吸着されて残り、カブレを引き起こすことがあるので、洗濯をまめにしてね。使い捨て手袋なら、ニトリルゴム製のものだとカブレにくいそうよ。

  • ノン子

    (3)食器洗いには洗剤を薄めて使う
    市販の食器用洗剤の使用法には、標準使用量として『水1リットルあたり本品2.5ミリリットルをうすめて使う』というように書かれています。最近の濃縮型の洗剤だったら0.75ミリリットルで良いそうよ。

  • ひなこ

    小さじ一杯が約5ミリリットルだから、1/6杯ほどで汚れは落ちるということですね。洗剤中の界面活性剤は皮膚の保湿成分を溶かし出すばかりか、角質を変性させたり、汗腺から侵入して皮膚に炎症をおこしたりする、という報告1)がありましたね。

  • ノン子

    最近は保護成分入りの洗剤もあるけど、スポンジに洗剤を直接とって洗うと濃い洗剤液に触れることになるから、やはり薄めて使った方が良いと思うわ。

  • ひなこ

    その方が洗剤を使いすぎないで、環境にもやさしいですよね。

  • ノン子

    (4)濡れた手はこまめに拭く
    濡れたままの手で他の作業をするのは、キケンよ。水でふやけた皮膚は傷がつきやすいし、水分が蒸発する時に熱を奪い皮膚の温度を下げてしまうの。皮膚温が下がると血流も皮脂の分泌量も減ってしまいますよ。水仕事の間でも、面倒がらずに柔らかいタオルなどでしっかり水気を拭き取ってね。

  • ひなこ

    手をきちんと拭かないと、シモヤケにもなっちゃいますよね。子供のころよくおばあちゃんに言われたなあ…

  • ノン子

    (5)すばやく保湿ケアをする
    水仕事が終わって水気を拭き取ったら、手が乾ききらないうちに保湿クリームをつけるのがポイントよ。指の間、爪や関節の周りも忘れないでね。

  • ひなこ

    血行が良くなれば血液から水分が供給され、皮脂の分泌も増えますね。

  • ノン子

    (6)手が空いている時には手のマッサージ
    保湿クリームをつけることもマッサージになるし、電車を待っている時や考え事をしながらとか、手のマッサージならいつでも“手軽に”できるわね。

働く手にこそ愛の手を!

  • ノン子

    手や指先は水仕事に限らず、紙を扱ったり、いろいろな物に触れる機会が多いから、そこで水分を奪われたり摩擦のダメージを受けたりしやすいのよ。本のページがめくりにくかったり、物がすべりやすくなったら、指先が乾いて硬くなってきた兆候なので、要注意ですよ。

  • ひなこ

    手が荒れていると、何をするにも能率が悪くなっちゃいますよね。

  • ノン子

    手は、シミやシワも出やすく、一番年齢が出るところとも言われます。ガサガサの手ではお顔のお手入れもままなりません。顔と同じくらいに手のケアにも気を配ってあげて下さいね。

参考文献

  1. 安江良司:「化粧品の有用性‐評価技術の進歩と将来展望」, 薬事日報社, 459-467(2001)
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